絶望を笑いに変える芸人たち

「笑う」ということができる動物は、人間だけだといわれる。

チンパンジーやゴリラやオランウータンなどの霊長類は、取っ組み合いや、くすぐり合うことで笑い声をあげるらしいですが・・・純粋に人間の「笑い」とは別のものでしょう。

「笑い」を考察したり、分析することは本当に難しい。「笑わす」ことと「笑われる」ことの違いとか・・。

「普段、高いところから説教を説いている校長先生が、お辞儀をしたときに、カツラが落ちて、慌てる」ということの中には、真面目で偉い人が、実は自分たちと同じ存在、滑稽で愚かな人間であるという構図の「ズレ」が笑いを生じさせたといえる。

怒らせることや、嘲笑されることは、比較的、簡単にできるけれど、笑わせることには理論や技術が必要ですから。

そんな一筋縄ではいかない「笑い」を職業にしている芸人さんたちの生き方を、文章に起こしているライター「てれびのスキマ」こと戸部田誠さんの「有吉弘行ツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか」という本を読み終えました。

この方、「タモリ学」という本でもタモリさんの魅力をバッサリと解説されています。



有吉弘行だけでなく、一時代を築いているダウンタウン、ナイナイの矢部、爆笑問題の太田、オードリー若林、オリエンタルラジオマツコ・デラックスなどの半生を振り返りつつ、絶望を笑いに変えているその構造を分析した内容。

「笑う」という行為そのものが見世物になることに、いち早く気付いたダウンタウン

「ニヤニヤ笑う」自分流のツッコミをみつけた、矢部浩之

なんていうコンテンツにも興味を惹かれましたが、私的に1番興味があったのは、やはり有吉とマツコ。

かたや、アイドルとして電波少年でブレイク後の没落。
かたや、異形の極致としての病み。

両者ともに、「人に蔑まされる挫折」という地獄から這い上がった、その「笑い」の捉え方、「批判性を孕んだ毒」を売り物にできる立ち位置に興味があったからです。

人生、晴天の日ばかりではない。

ましてや、人を批判しながらの芸風。どん底を経験したあとに会得した、「反発をかわしてしまう」強さの秘密は。

ご興味のある方だけ、どうぞ。


いつも、お読みいただき感謝しています。


http://youtu.be/Bm00zwI0vog

http://youtu.be/IvRdOhxlCN0


てれびのスキマ

1978年生まれ、いわき市在住。お笑い、格闘技、ドラマなどをこよなく愛する、新進気鋭のTVっ子ライター。メールマガジン水道橋博士のメルマ旬報』『週刊SPA! 』「日刊サイゾー」で連載中。『splash!!』(双葉社)、『タモリ読本』『80年代テレビバラエティ黄金伝説』(ともに洋泉社)、『TV Bros.』(東京ニュース通信社)、『お笑いラジオの時間』(綜合ムック)にも寄稿する。近著に戸部田誠名義で『タモリタモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)がある。