「BAGDAD CAFE」 “Calling You”

過ぎ去りし時間は、感受性のセンサー機能を一新してしまうのだ。





旅行中のドイツ人・中年女性が、「ファースト・ペンギン」よろしく、ご主人と喧嘩別れというきっかけから、乾き切った砂漠のごときコミュニティをオアシスに変えていく物語、「バクダットカフェ」をシネマ部にて。






24〜5年前、当時、レーザーディスクにはまっていた時期で、「グランブルー」、「ディーヴァ」、「ベティ・ブルー」、そして、今作品などを友人たちに無理やり鑑賞させるというイベントを頻繁におこなっていた。そう考えると、現在も同じようなことをやっている。進歩していないなぁ。


びっくり仰天する驚きはなかったものの、当然のことながら、当時、感じた作品に対しての想いは、自分自身が驚くほどに、時間と経験により大きく変化している。


常々、書かせていただいていますが、「人生は、『人間』を知る旅」だと思う。それだけ、多種多様の人に出会い、刺激を受け、触発され、頭を打ち、生きてきたというところでしょう。




男女にたがわず、ホンジャマカ石塚であろうが、マツコ・デラックスであろうが、太っている人からは「ある種の癒し」を感じるのは私だけではないだろう。

ジャスミン役のマリアンネ・ゼーゲブレヒトには、言葉でいい表せないオーラがある。この作品以降、「パラドールにかかる月」、「ロザリー・ゴウズ・ショッピング」と続けて鑑賞した思い出があり。




人は人を無理やり変えることはできないが、その生きざまは確実に人に何らかの影響を与えることに異議を唱える方はおられないはず。



日々の仕事や生きることに疲れを感じている方には、干からび、乾いたカフェの住人や、たまたま居合わせた旅行者たち、近隣の住民に、ジャスミンの生き様がどのように変化をもたらしていくのかは「いい薬」としての効能が期待できるかもしれません。






共演の黒人女性、ブレンダ役のCCH・パウンダーのダンスと歌の旨さは特筆もの。「オール・ザット・ジャズ」の印象が鮮烈に残っている。「ER」にも出ていたんですね。優れた女優さんです。生活に疲れ切った女性の変貌、オーラの変化にご注目を。


ジャスミンにプロポーズするルーディ役のジャック・パランスは、この作品に出会うまで、その個性的な風貌と「シェーン」に代表される作品から、超悪役というイメージ。実はインテリで、舞台役者としても活躍していた方なんですね。


最後に監督のパーシー・アドロン。マリアンネ・ゼーゲブレヒトと同じくドイツ人。前述の「ロザリー・ゴウズ・ショッピング」でもメガホンをとっていますが、ドキュメンタリー畑の方なんですね。乾いた空気感、夕陽の空の色、音を立てて回転するブーメランと、ドイツ人らしからぬセンスとカメラワーク。現在も、ご健在のようです。


http://youtu.be/Vv2EsAxLe4c

主題歌の“Calling You”に関しては、誰もが耳にしたことのある、哀愁のあるメロディ。久しぶりに聴き直し、涙ものでした。




担当のI上K恵さま。心に沁みる、なつかしい作品をありがとうございました。




◆マリアンネ・ゼーゲブレヒト インタビュー

http://eiganomori.net/article/395415863.html