タイムマシンにお願い

ドンドンと和太鼓の音が鳴り響き、甲高い女性の声でアナウンスが始まった。

近所の小学校で恒例の盆踊りの催し。これほどの人がこの地域に住んでいたのかと驚く人の数と光景。赤、青、黄色、オレンジの照明に彩られた出店の数々。ハレの日、独特の高揚感と昔懐かしい想い。楽しいことはすべて、両親や周りの大人の人から与えられていた幼い頃にタイムトリップ。

それらを横目で見ながら、一路大阪へ。

最近は、都会、大阪や神戸に出なくなった。用事で出かけても、決まった場所、目的を達するとすぐに地元に帰る。世間を狭くしてはいけないなと思いながら、色々なことを経験し、知識を得ることで好奇心を失っていく悲しさ。


心斎橋大丸の横の道を東へ。

鰻谷の通りを入り、雑居ビルの中の3階に。入り口のまわりには人だかり。既に満席。

昨年末、東京で参加させていただいた山下達郎セッションでお世話になりましたベーシストのキッシーさんが関西初ライブ。一目、顔を拝みにきました。お客さんは、20代後半から30代くらいの女性が大半。ボーカルとドラムが地元大阪出身ということで、ご両親、同級生やら友人の方々が応援に詰めかけて大盛況なのです。



「キミソラ」という女性ボーカル、女性ギター、ベース・ドラムは男性という4人編成。女の子の心情を切々と歌う楽曲が続く。途中2曲だけカバーソングが入るが、ほとんどオリジナルで10曲ほど。若さ故の恋の悩み、世の中や自身の運命への想いが次々に。「頑張っているなあ」と素直に感動。



バンドの維持運営していくことのたいへんさや、精神的苦労を思う。同じような時代を経てきた自分自身と照らし合わせて、様々な想いが頭をよぎる。

終了後、ベースのキッシーさんと再会を喜び、握手。



CDを二枚購入して会場を出た。キッシーさん、また、いつかどこかでお会いしましょう。

無我夢中で、好きな何かに没頭できる時代を経て、社会のしがらみや生きていくことの難しさに直面し、人は「大人」の階段を上る。険しい山を登るかのごとく、登るほどに眼下に視界が広がり、自分の置かれた世界が鮮明化する。今現在の自分が、どのように糧や知識や敬愛を受け、ここに存在しているのかを知る。それが家族や、近所のおじさん、おばさん、知人友人を含むコミュニティ、社会という大きなくくりからの、愛を含む恩恵によってもたらされし物であることに気づきながら、粛々と歳を重ねていくのだ。

音楽や子育ては、メロディや子供の目を通して、自身の半生を振り返る「タイムマシーン」に思える。2度とは戻れないし、戻りたくもないけれど、何かに気づかせてくれたり、ひとときの安らぎを与えてくれる。

帰り道、頭の中で、ずっと懐かしいあの時代の音楽が頭の中で響き続けた。

消そうとしても、壊れたリズムボックスのように鳴り止まない。

あの輝かしい時代に戻ることなど、出来るはずもないのに…。