恋に落ちて  シネマ部にて

ひさびさ、シネマ部で「月の輝く夜に」以来の恋愛ものでした。



小説でも、映画でも物語として恋愛を描くには、障害が必要です。運命のいたずらとか、家柄とか、年齢や人種の違いとか、貧富の差とか、戦争とか、重度の病とか・・。


男と女が、巡り合って、恋が成立するだけでは、だれも見向きもしない。日常によくある話で片付けられてしまいます。いかに、みている側にハラハラ、ドキドキを感じさせるかが肝になりますよね。








互いにしっかりした家庭がありながら、偶然が重なって意識し合い、行き違いや擦れ違いを繰り返し、惹かれあう。それが原因で、両方の家庭は崩壊しますが、結ばれない。最後には、その可能性を匂わして終わります。価値観のでき上がった成熟した男女ゆえに、より切ない。


名優、メリル・ストリープロバート・デニーロですから、両者ともにナチュラルで完璧な演技。彼らの脂の乗り切った絶頂期・80年代の作品ですから当然。わきを固めるハーベイ・カイテルダイアン・ウィーストも素晴らしいです。








携帯もない時代の恋愛。劇中、地上線の電話が、重要なアイテムとして活躍します。

ためらう。かける。とまどう。遅れる。待ち続ける。観ている側は、「いまだ」、「なぜ?」、「どうしてためらう?」、「なんでこの場面で・・」という具合。微妙なやり取りの綾や、すれ違いの妙、心理の揺れ動きを引き出す小道具になっています。

携帯電話やメールがあれば、いとも簡単に乗り越えられるシーンが。そういう意味では、現代の若者には、滑稽に映るかもしれません。

流行語になった「金妻」の時代をご存知の方には、なつかしく、惹きつけられるシーンがいっぱい。



個人的にはメリル・ストリープが、ダサかったのに、どんどん魅力的になっていくプロセスが好きですねぇ。


恋愛で、今一歩を踏み出せずにいる方に、ぜひご覧いただきたい作品。






鑑賞後の食事会では、「最後の再会のシーン」の有無で熱い議論が。精神的な恋愛のみで終えるか、それから先の解釈は、観ている側に委ねれる。いや、「めでたし、めでたし」の可能性が強いかな。

鑑賞してみようかと思われる方は、そのあたり、注目してご覧ください。