思い込みという罠

冷蔵庫のドアを開けて、なにを作るのか・・。

メインを肉にするのか、魚にするか。はたまた、野菜だけで・・。

材料がTVの料理番組のようにすべて揃っている場合は別だけれど、往々にして、そこには必ず制約があります。

「我々美容師は、決められた素材のなかで、最善を尽くし、お客様の食べたい料理を作らねばならない料理人のようなもの」。

それも、その方の好み、その日の気分、腹具合を推測し、そのレシピ、味付け、量、調理時間を組み立てなければなりません。

どんなにその方が、イタリアンがお好きだとしても、前日に、お肉をたらふく食べておられたり、体調がすぐれず食欲がなかったりする場合、オイルやチーズや卵がたっぷりのカルボナーラや濃厚なクリームソースのかかったカッペリーニを大量に出したとしたら・・。

そのあたりをしっかりと踏まえて、お話をしてレシピを考えるわけなのです。

が、食べていただき、「美味しかったよ」と喜んでいただき、そんなやり取りを何度か交わして、その方の趣味嗜好を覚え、信頼関係が出来上ってから、「すべてお任せするわ」と言っていただいた時。

実はそのときが、1番難しい。

それは美容師冥利に尽きるのだけれど、そこで新たな挑戦をするのか、はたまた、いままでと同じレシピのなかで最善を尽くすのか・・。

こうすれば、新たな感動を引き出せるのではないか、さらに喜んでいただけるのではないだろうか・・。

そんな想いと、思い込みの間にある罠の存在を忘れてはならないと・・



自戒を込めて思うのです。