「火花」は散るのか、燃え上がるのか

リアルな中国の化学薬品工場爆発の映像が生々しく脳裏に残るなか、芥川賞受賞で話題の「火花」を電子書籍Kindleで読みました。






どんな世界においても、世間に認めてもらえるレベルに行き着くことはたいへんなこと。まして芸人として名を知られ、世に出ることの厳しさは並大抵のことではないと。

そんな芸人を目指して、表現者として独自の形を確立しようとした先輩と後輩の物語。


漫才師の世界の楽屋裏を題材に、主人公の徳永と先輩芸人の神谷とのやり取りは、まさに私小説。一人称で、会話の記述が多く、太宰治が好きだという又吉さんの文学的な冒頭の書き出しから一気に読めました。


主人公の会話の部分は、又吉氏の声やしゃべり方がダブることで、やはり感情移入しやすいように感じます。

自分には無い才能に憧れを持つ後輩として。ある種の弟子としての視点から、自らの芸人としての軌跡を辿りつつ進みます。

追い詰められた環境のなかで、独自の笑いを追求するあまり、答えが見つからぬまま一線を越えて異端へ突き進む先輩。後輩・徳永なかで神格化していたはずの才能が…。


天才と異端、メジャーとマイノリティー。技巧と非凡なセンス。その紙一重かもしれない違いあるものを考えさせられました。


純文学と大衆小説の区別がどこでされるのかは分かりませんが、又吉氏には次回作が勝負となるでしょう。



夢を追求する若者にお薦めできる内容です。